火山の冬

大規模な火山噴火で気温が下がることを「火山の冬」と言う。爆発的な噴火で大量の二酸化硫黄が成層圏に入ると、大気中で硫酸エアロゾルとなり太陽光を反射し、地表に届く太陽エネルギーが減少するため気温が下がる(日傘効果)。
1783年にはアイスランドのラキ火山で大規模な噴火が発生した。北半球の気温はこの噴火の影響で約1℃低下し、その後数年にわたって世界規模で低温・多雨などの異常気象が発生した。わが国では浅間山の噴火も加わり天明の大飢饉の一因となり、フランスでは食糧不足となり1789年のフランス革命の遠因となったと言われている。1815年にはインドネシアのタンボラ山が大噴火し、世界の平均気温は1.7℃も低下した。噴火の2カ月後、雨天続きによる足場の悪化でナポレオンが作戦に失敗し、ワーテルローの戦いで敗北した。翌年は「夏のない年」となり農作物が壊滅的な被害を受け、欧州に餓死者が溢れた。
近年では、1991 年にフィリピンのピナツボ火山が大噴火し、地球の平均気温が 0.5℃低下した。北半球の平均気温が0.5~0.6℃低下、地球全体で約0.4℃低下、低気温が数年間続いた。わが国では1993年に冷夏となり、平均気温が2〜3℃も低下し米が不作となり、タイ米を緊急輸入する事態(平成の米騒動)となった。
19世紀末の数十年間は大規模な噴火が続いたため気温が低下したと言われている。ひとたび大規模な火山噴火が起これば急激な寒冷化となり、地球温暖化に一時的なブレーキがかかる可能性がある。

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