平静の心(その2)

聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生が、105歳でお亡くなりになりました。予防医学、終末期医療の普及や、医学・看護教育にも尽力された、戦後日本の医療界のトップランナーでした。日野原先生が敬愛する、ウイリアム・オスラー博士の言葉は、医師のバイブルと言われています。

私には理想とするものが三つある。
一つは、その日の仕事を精一杯やり、明日について思い煩わないことである。
第二の理想は、力の及ぶ限り、同僚や自分がケアする患者に、黄金律(己の欲するところを他人に施せ)を実行することである。
第三の理想は、たとえ成功しても謙虚な心をもち、慢心することなく友人達の愛情を受けることができ、哀しみの日が訪れたときには人間に相応しい勇気を持って事に当たることができるような、そういう平静の心を培うことである。
(平静の心 オスラー博士講演集:日野原重明 仁木久恵 訳より引用)


日野原先生は「平静の心」の体現者でした。「よど号ハイジャック事件」に巻き込まれた時には、オスラー博士の「医師はどんな時でも平静な心をもつべきだ」という言葉を思い出されて、犯人と対応され、病人の救護など沈着冷静な行動を取られました。また、「地下鉄サリン事件」が起こったときにも、直ちに診療を止めて、被災者の救護に全力を投入されました。我々医師は、どんな状況においても、心の平静を保ち、知識と経験から正しく判断し行動したいものです。
(更科医師会報第17号:編集後記より)

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