人新世(アントロポセン)

約1万1700年前に氷河期が終了し、その後の「完新世」は、温暖な気候のなかで人類が大きく発展した時代である。20世紀後半以降に爆発的に増大した人類の活動(グレート・アクセラレーション)が地球環境を大きく変えた。そのため地質年代が「完新世」から次の時代に突入したという考えから「人新世」という言葉が作られた。オゾンホール研究で知られるパウル・クルッツェン博士(1995年ノーベル化学賞受賞)の提案である。博士は「人新世」という用語を通じて自分たちの活動が地球にどんな影響を及ぼしているかを自覚して欲しいと述べている。

人類初の核実験である1945年のトリニティ実験が「人新世」の始まりの一つと考えられている。第二次世界大戦後の人間活動の加速的増大により、温暖化ガスの増加、オゾン層の破壊、海洋の酸性化、熱帯雨林の減少など地球環境に悪影響がもたらされた。「人新世」とは人類が核の使用を始め、目先の利益を優先した経済活動により地球の汚染を進め、人類が破滅へと向かう時代なのかもしれない。

際限なく肥大化する人類の生産活動により環境破壊が進み、気候危機が強まっている。また、人類が奥地の森林を切り開くことや野生動物を売買することで、未知のウイルスが社会に入り込むリスクも高まっていった。思い上がった人類への地球からの警告が新型コロナウイルス感染症なのだろう。新型コロナウイルスのパンデミックにより、経済格差、医療格差、国際協力の欠如が顕在化した。気候変動もパンデミックも「人新世」の危機である。人類共通の課題として速やかに解決するため国際的な協調と連帯が求められる。しかしながら、北京冬季五輪の開催中にもかかわらず、ロシアによるウクライナ侵攻の準備が進められている有様である。

今年の人類滅亡への「終末時計」は3年連続で残り100秒と発表された。「人新世」において人類は地球の歴史にどのような痕跡を刻むことになるだろうか? Homo sapiens(賢い人間)がTerra Sapiens(賢い地球)をもたらすことが出来るのだろうか?それとも「人新世」は地球史の薄い1ページで終わるのだろうか?