電子カルテは医療DXの礎 ー AIのある電子カルテが望まれる ー

国は「医療DX令和ビジョン2030」で電子カルテ普及率100%を目標に掲げている。令和5年度の普及率は、大病院では93.7%に達しているが、クリニックでは55.0%に留まっている。メーカーごとに仕様が異なり、導入費用が高額であることが、小規模医療機関にとって大きな壁となっている。この課題に対し、国は「標準型電子カルテ」を開発し、無償提供する方針である。現在開発中のα版は、無床クリニック向けに外来診療の基本機能を備え、クラウド型を前提とする。国が共通機能を提供し、民間がオプションを組み合わせる仕組みで、全国医療情報プラットフォームとも連携する設計となっている。初期投資を抑えられるうえ、セキュリティや更新管理も容易で、普及拡大が期待されている。しかし普及を阻む第2の壁が、デジタルデバイド(情報格差)である。日本医師会の調査では「導入不可能」と回答した割合が20~40代で29.4%に対し、80代以上では64.4%に上り、世代間格差が明確である。高齢の医師にとって費用よりも運用不安が重く、スタッフも高齢であれば習熟に時間を要する。結果として電子カルテを導入しないまま引退を迎える例も少なくない。この壁を超えるにはAIを活用して操作を直感的かつ簡便にすることが必要である。音声認識による診療記録の自動入力や、サマリー・紹介状の作成をAIが担えば、「オートマ車のように誰でも扱える電子カルテ」となるだろう。日本医師会は「誰一人、日本の医療制度から取り残さない」ことを医療DXの大前提としている。真のデジタル化には、誰にとっても優しく、低コストで使える電子カルテの実現が不可欠である。(長野医報:2026年1月号:若里だより)

