マイナ保険証は見切り発車 ― 弱者に優しい医療システムなのか? ―
「マイナ保険証」には課題が多い。まず、顔認証システムなどの医療DXに対応できない高齢者が多い。また、データの更新に約2か月を要するため、最新情報を得ることができない。さらに、災害時や通信障害時には対応が困難となる。また、情報漏洩や偽造マイナカード問題があり、信頼性が損なわれている。安全性・利便性にはほど遠く、マイナ保険証の利用率は10%程度に低迷している。それにもかかわらず、現行の健康保険証は12月2日に新規発行が停止され、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に一本化されることに決められた。経過措置で、発行済の保険証は、廃止後も最長で1年間利用できる。また、「マイナ保険証」を持たない人には、最大5年間有効な「資格確認書」が発行される。12月から医療機関の受付では、マイナ保険証、経過措置の健康保険証、資格確認書など、多様な資格確認方法に対応することが必要となる。ただでさえ多忙な医療機関の受付にさらなる負担を強いることになる。来春にはiPhoneにマイナンバーカード機能が搭載され、健康保険証として利用可能となり、「スマホ保険証」が誕生する予定である。セキュリティーが高く便利なシステムとなるが、医療機関ではそれに対応するカードリーダーが新たに必要となる。医療DXに対応できなければ、医療を継続することが難しい時代となった。クリニックは一人船長の小舟である。小舟に保険診療の荒波は容赦ない。医療にこそ「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」が不可欠なはずである。