COVID-19ワクチン接種の義務化はまだ意味があるのだろうか?(サイエンス誌から:2023/3/14)

ワクチンによってCOVID-19の感染を食い止められるという当初の期待は、数ヵ月後には感染に対する防御力が低下することが明らかになったため、薄れてしまった。さらに、ワクチンによる免疫を回避できる新しい亜種が出現したことで、ワクチン接種で感染拡大を抑えられるという期待も薄れた。

2022年4月、英国の研究者らは、150万人以上の健康記録に基づき、オミクロン変種の症候性COVID-19に対する防御力が、アストラゼネカ社製ワクチンの2回目の接種から25週後にはゼロに、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンの2回目の接種からは25週後にわずか9%まで薄れたとThe New England Journal of Medicineに報告した。ブースター接種により、1~2カ月は防御率が60%以上に回復したが、10週間後にはその防御率も低下しはじめた(重症化に対する防御はより長く持続する)。自然感染で免疫を獲得する人がますます増えている現在、ワクチンの現実的な効果を測定することはさらに難しくなっている。

多くの国や団体が、すぐにワクチン接種の条件を撤廃したり、強制するのをやめたりした。6月、オーストリアはその法律を撤回した。買い物や外食などでワクチンの「パス」を要求していたヨーロッパのほとんどの国は、2022年夏までにパスを取りやめた。10月にはシンガポールがワクチン義務化を解除すると発表し、その1カ月後にはドイツの保健相が、医療従事者であってもワクチン義務化の失効を認めると発表した。ワクチン接種が新型インフルエンザへの感染予防に大きな意味を持たなくなったため、疫学的にワクチン接種を義務付ける理由がなくなったという。

https://www.science.org/content/article/do-covid-19-vaccine-mandates-still-make-sense

オミクロン変異体に対するCovid-19ワクチンの有効性
Covid-19 Vaccine Effectiveness against the Omicron (B.1.1.529) Variant
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2119451
コロナワクチンを2回接種した初回免疫では、omicron変異体による症候性疾患に対する防御は限定的だった。
ブースターを行うと、防御力が大幅に向上したが、この防御力は時間の経過とともに低下していった。